「いくらで売る?」に、すぐ答えを出さない
(フリマ出品の話からの続きです)
「売価」は商売のなかでも非常に重要な要素ですが、子どもが何かを作って、「これ、いくらで売る?」と聞いてきたら、親としては少しうれしい反面、返事に迷います。
安すぎると、がんばった気持ちが軽く見える気がする。 高すぎると、誰も買わないかもしれない。 でも、親がすぐ値段を決めてしまうと、子どもが考える機会は減ってしまいます。
わが家でも、そういうときは答えを急がず、まずは「何にお金や手間がかかっているか」を一緒に見ます。 値段は、気分だけで決めるものではなく、少し分解して考えられるからです。
たとえば、家で作った折り紙作品や小さな飾り、あるいは長女が工作で作ったものを並べてみると、こんなふうに話せます。
- 紙やテープはどれくらい使った?
- 作るのに何分かかった?
- これを欲しがる人は、どんなところを気にしそう?
いきなり「相場はこれ」と言うより、まず自分が何を使ったかを見えるようにすると、子どもも考えやすくなります。

原価は、材料費だけで終わらせなくていい
子どもと値段を考えるとき、「原価をどう見るか」は少し迷います。 家庭の小さな売り物だと、材料費はほとんどかからないことも多いからです。
それでも、原価という考え方に触れるのは大事だと思います。 細かい計算を正確に出すことより、「作るには何が必要か」を知ることが先だからです。
わが家なら、こんなふうに整理します。
- 紙、テープ、色えんぴつなどにいくら使ったか
- 作るのにどれくらい時間がかかったか
- 失敗して作り直した分も、少しは手間として見ていいか
もちろん、子どもに「失敗した分も払って」と強く言うわけではありません。 そこまで厳密にすると、売る楽しさが薄れてしまいます。
ただ、「材料だけでなく、時間も使っている」と分かるだけで、値段の見え方はかなり変わります。 長女くらいの年齢なら、この考え方は少しずつ理解しやすいです。 まだ小さい子なら、材料を並べて「これを使ったから、少しお金がかかっているんだよ」と軽く触れるくらいで十分でしょう。
手間を入れると、値段はぐっと現実に近づく
値段を決めるとき、原価だけを見ていると「じゃあ安ければいいよね」で終わりやすいです。 でも実際には、手間の差がかなり大きいはずです。
同じ紙の飾りでも、
- 5分で作れるもの
- 30分かかるもの
- 乾かす時間が必要なもの
- 同じ形を何個もそろえる必要があるもの
では、親の感覚でも負担が違います。
子どもに伝えるときは、難しい言葉にしなくて大丈夫です。
- 「これ、作るのにけっこう時間がかかるね」
- 「10個作るなら、1個より大変だよ」
- 「作る人がまた作れそうと思える値段かどうかも大事だね」
こう言うと、子どもは「値段=材料費」だけでなく、「値段=作る人が続けられるかどうか」も考えやすくなります。
実際、長女に話すと、思ったより素直に考えます。 ただ、すぐに「じゃあ高くしよう」とはなりません。 「高くしたら売れないかも」という心配も出てきます。 その揺れも、値段を考える練習の一部だと思っています。

ほしい人の気持ちを入れると、値段が一方通行にならない
値段は、作った側の気分だけでは決まりません。 「ほしい人がどう感じるか」も大きく関わります。
ここは、売る経験の全体像ではなく、値段を決める場面だけに絞ると考えやすいです。
たとえば、こんな問いかけができます。
- これを買う人は、どこを見そう?
- 見た目のかわいさを重視する人かな?
- 同じ値段なら、もっと大きいものを選ぶ人もいるかな?
- そもそも、どんな人がこれは欲しいと思うかな?
こう話すと、値段は「作った人の気持ち」だけで決めるものではないと分かってきます。 少し意地悪に聞こえるかもしれませんが、ここを知ると、子どもは「自分が好きだから高くても売れる」とは限らないことに気づきます。
もちろん、家庭の小さな売り物で厳しい市場原理まで教える必要はありません。 でも、「ほしい人がいるか」を考えるだけでも、視点はかなり広がります。
わが家なら、こんな順番で決める
値段の相談は、長い会議にしなくても大丈夫です。 わが家なら、次の順番で話します。
1. 材料にどれくらい使ったかを見る 2. 作るのにどれくらい時間がかかったか話す 3. ほしい人が見てどう思うか想像する 4. 最後に、売るならいくらがよさそうか決める
たとえば、子どもが小さな工作を持ってきたとします。机に置いて、こんな会話をするイメージです。
「この紙とテープは使ったね」 「作るのに10分くらいかかったかな」 「これは“かわいい”と思う人が買いそうだね」 「じゃあ、100円にする? 200円にする?」
このとき大事なのは、親が答えを出しすぎないことです。 ただし、子どもがかなり高い値段を言ったときは、少し現実を足してもいいと思います。
- 「その値段だと、同じくらいのものを買える人が少ないかも」
- 「少し下げたほうが、手に取りやすいかもしれない」
逆に、安すぎるなら、
- 「それだと、作るのにかかった時間に合わないかも」
- 「もう少し気持ちをのせてもいいんじゃないかな」
と伝えることもできます。
親としては、ここで“正しい価格”を教えるより、“考え方の順番”を残すつもりでいるとちょうどいい気がします。
すでにあるお小遣いとも、つながってくる
わが家では、長女にはすでに月1000円のお小遣いを渡しています。 使った日付、用途、金額をメモして、あとで親子で振り返るようにしています。 長女はわりとムダ遣いも多いタイプなので、こうした記録は「何に使ったか」を見直すきっかけにもなっています。
このお小遣いのやり取りと、値段を考える話は、実はつながっています。 どちらも、「お金はなんとなく使うものではなく、理由を持って動いている」と感じる練習だからです。
たとえば、長女が「これ欲しいけど、買う?」と迷うときがあります。 そんなときに、すぐ答えを出すのではなく、
- 今すぐ必要か
- ほかに似たものはあるか
- しばらく待っても気持ちは変わらないか
を一緒に考えることがあります。 売る値段を考えるときも同じで、材料費や手間だけでなく、「相手がどう感じるか」を入れると、考えが立体的になります。
まずは「3つ見れば十分」
いきなり本格的にしなくても、家庭では小さく始められます。 値段を決める前に、この3つを確認するだけでも十分です。
・使った材料
・かかった時間
・どんな人がほしいか
この3つが見えると、子どもは「なんとなくの値段」ではなく、少し考えて値段を出すようになります。 親も、口を出しすぎずにすみます。
わが家でも、こういう話がすぐうまくいくとは思っていません。 子どもは気分で高く言いたくなることもあるし、逆に「早く売りたいから安くていい」と言うこともあります。 そのたびに、親としてはどこまで見守るか迷います。
でも、その迷いも含めて、値段を決める練習なのだと思っています。 売る側の視点は、計算だけでは育ちません。 原価と手間と、ほしい人の気持ちを行ったり来たりしながら、少しずつ身についていくものです。
子どもに「いくらで売る?」と聞かれたら、正解を急がず、まずは一緒に3つを並べてみる。 それだけでも、家庭の小さなものづくり体験はぐっと学びやすくなるはずです。

